胃がんにおける内視鏡的粘膜下層はく離術(ESD)とは?

低侵襲
ESD
胃がんの治療法の選択肢の1つに「内視鏡的粘膜下層はく離術(ESD; Endoscopic Submucosal Dissection)」と呼ばれる、内視鏡を用いた手術があります。これは早期胃がんに対する治療法の1つで、2006年4月から早期胃がんに対しては医療保険の適応となっています。再発率も低く、日本国内では広く行われるようになった治療法です。 今回は、ESDの適応ケースや根治性の評価などについて、京都府立医科大学付属病院・消化管内科の土肥 統先生に教えていただきました。

 

胃がんにおけるESDの適応:適応ケースが僅かに拡大する可能性も

 

 

従来の胃がん治療のガイドライン上では、病変が2cm以下で分化型、粘膜内がん・潰瘍が無いようなケースだけが、内視鏡治療の適応とされていました。

近年のガイドライン変更によって、2cm以上・分化型の粘膜内がんであっても潰瘍がなければ適応されることになりました。

さらに、3cm以下・分化型の粘膜内がんで潰瘍があるケースも、ESDの適応病変として追加されました。

 

 

内視鏡治療の適応基準

 

 

適応が追加になったケースについては、今までの適応されてきたケースよりもESDにおける手技の難易度が高いとされています。

そのため、新しく適応になった症例でESDの治療を受けようと考えている場合は、技術的に問題がない施設・医師に任せる方が安心だと思います。

今までにESDの症例をある程度の件数、取り扱っている施設が良いでしょう。

 

 

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

 

 

また、2cm以下・未分化型がんの粘膜内がん・潰瘍が無いケースは、現在のところ適応拡大病変として設定されていますが、近いうちにJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)から治療成績のレポートがされ、その成績結果によっては「拡大病変」から正式に「適応病変」になる可能性があります。

基本的にESDの適応については、「リンパ節転移等の他の場所への転移は無いがんが適応となる」と決められていました。

そのため、これから先も適応病変が広がる可能性は低いと考えられます。

 

また、リスク要因としての高齢者については、高齢がESDの成績悪化に影響しているという報告は無いため、高齢者でも低侵襲で、比較的安全に行うことができる治療だと思われます。

 

早期の胃がんを治療することでその患者さんにとってどの程度のメリットがあるのかについては、並存疾患や全身状態を綜合的に判断して決める必要があります。

 

 

ESDにおける根治性の評価:転移や再発リスクを見込んで3段階で評価

 

 

現行のガイドラインでは、eCuraA・eCuraB・eCuraCという3段階で、ESDにおける根治性を評価しています。

 

eCuraA・eCuraBはほぼ治癒と考えて良い段階です。

 

またeCuraCでは、以前は非治癒と言われていたリンパ節転移・再発のリスクが0%では無いため、追加の手術が推奨されます。

年齢的にも若く、リンパ節転移の可能性が高いケースでは、積極的な追加手術が推奨されていますが、難しいのは高齢者や多数の合併症を抱えているケースです。

これらの患者さんは手術のリスクが高いため、追加手術には消極的になります。

 

 

ESDによる根治性の判定

 

 

転移のリスクと、手術を行うことによるリスクを、十分に理解してもらった上で、患者さん自身が自分の病状を把握し、治療を選択することになります。