従来の胃がん治療のガイドライン上では、病変が2cm以下で分化型、粘膜内がん・潰瘍が無いようなケースだけが、内視鏡治療の適応とされていました。
近年のガイドライン変更によって、2cm以上・分化型の粘膜内がんであっても潰瘍がなければ適応されることになりました。
さらに、3cm以下・分化型の粘膜内がんで潰瘍があるケースも、ESDの適応病変として追加されました。
適応が追加になったケースについては、今までの適応されてきたケースよりもESDにおける手技の難易度が高いとされています。
そのため、新しく適応になった症例でESDの治療を受けようと考えている場合は、技術的に問題がない施設・医師に任せる方が安心だと思います。
今までにESDの症例をある程度の件数、取り扱っている施設が良いでしょう。
また、2cm以下・未分化型がんの粘膜内がん・潰瘍が無いケースは、現在のところ適応拡大病変として設定されていますが、近いうちにJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)から治療成績のレポートがされ、その成績結果によっては「拡大病変」から正式に「適応病変」になる可能性があります。
基本的にESDの適応については、「リンパ節転移等の他の場所への転移は無いがんが適応となる」と決められていました。
そのため、これから先も適応病変が広がる可能性は低いと考えられます。
また、リスク要因としての高齢者については、高齢がESDの成績悪化に影響しているという報告は無いため、高齢者でも低侵襲で、比較的安全に行うことができる治療だと思われます。
早期の胃がんを治療することでその患者さんにとってどの程度のメリットがあるのかについては、並存疾患や全身状態を綜合的に判断して決める必要があります。
現行のガイドラインでは、eCuraA・eCuraB・eCuraCという3段階で、ESDにおける根治性を評価しています。
eCuraA・eCuraBはほぼ治癒と考えて良い段階です。
またeCuraCでは、以前は非治癒と言われていたリンパ節転移・再発のリスクが0%では無いため、追加の手術が推奨されます。
年齢的にも若く、リンパ節転移の可能性が高いケースでは、積極的な追加手術が推奨されていますが、難しいのは高齢者や多数の合併症を抱えているケースです。
これらの患者さんは手術のリスクが高いため、追加手術には消極的になります。
転移のリスクと、手術を行うことによるリスクを、十分に理解してもらった上で、患者さん自身が自分の病状を把握し、治療を選択することになります。