直腸がんの術前放射線療法とは?メリット・デメリット、副作用はあるか?

放射線治療
直腸がんは消化管にできるがんで、最も肛門に近い部分にできる消化器のがんです。直腸がんの手術では、肛門の温存が1つの重要なポイントになりますが、肛門温存か非温存かを分ける選択肢の1つが放射線治療です。直腸がんは形成された場所が肛門に近ければ近いほど、肛門温存が難しくなります。これを解消する手段の1つが術前放射線治療です。直腸がんの術前放射線治療のメリットや副作用、具体的な治療法について、がん研究会有明病院・放射線治療部の田口 千藏先生に教えていただきました。

 

放射線治療のメリット:肉眼で見えないがん細胞を死滅させて再発を防止

 

 

直腸がんにおける放射線治療のメリットは、顕微鏡レベルの小さいがん細胞を死滅させることができるということです。

このような小さながんは肉眼では見ることができないため、外科的切除では取りきれずに残ってしまう可能性があります。

それを死滅させることで、局所における再発のリスクを下げることができます。

 

もう1つのメリットとしては、肛門温存の可能性があるということです。

肛門の近くにできた直腸がんは肛門を温存しての切除術が非常に難しいとされていますが、術前に放射線治療を行うことで腫瘍の縮小ができれば、肛門温存の可能性が高まります。

 

 

直腸がんの術前放射線治療:オーダメイドのプログラムで患者一人ひとりに合わせた治療を行う

 

 

直腸がんの放射線治療には様々な準備が必要です。

その1つがCTによる画像検査です。

 

 

CTによる画像検査

 

 

画像検査を行うことで、コンピュータ上で「どこに、どれだけの量の放射線を照射するか」をプログラムします。

ここでプログラムされたデータを元に患者一人ひとりに合わせた放射線治療を行うのです。

直腸がんの放射線治療には、X線を用います。

X線は照射されても熱さや冷たさ、痛みは感じません。

 

 

放射線治療機器

 

 

放射線治療の副作用:晩期障害では骨盤にヒビが入ることも。毛髪の抜けは起こらない!

 

 

放射線治療を行う際には、治療期間中や治療終了から少しの間に生じる急性の副作用や治療が終了してから長い期間が経過してから生じる晩期障害などが起こる可能性があります。

例えば、放射線治療が終了してから半年や1年が経過してから、骨盤の骨にヒビが入ったりすることがあります。

これを不全骨折と言い、これは晩期障害に該当します。

 

放射線の副作用は、放射線を照射して通り抜けていく部分にしか生じないため、直腸がんの放射線治療で毛髪が抜けたりするといったことは起こりません。

ただし、放射線を照射した部分についてはあらゆる副作用を生じる可能性を想定しなければなりません。

起こりうる副作用がどのような症状なのか、またどうすれば対処可能なのかといったことはきちんと説明される必要があります。

 

 

術前放射線治療が適応される直腸がんとは:腫瘍塊が大きく転移があるケースでは適応

 

 

術前放射線治療は全ての直腸がんで適応されるわけではありません。

適応される直腸がんは、進行直腸がんという、かなり大きな腫瘍で、かつ近くのリンパ節に転移も起こしているような状態です。

 

 

下部進行直腸がん

 

 

このような直腸がんの場合、外科的治療で切除するだけでは周囲から再発するリスクが高いため、術前に放射線治療を行うことで腫瘍の大きさをある程度小さくして、リンパ節への転移を防ぎ、再発を防止します。

肛門近くに直腸がんがあり、普通に切除をすれば永久人工肛門になる可能性が高い場合なども、術前放射線治療を行なって腫瘍を縮小することで、永久人工肛門を避けられる可能性があります。

 

 

放射線治療の照射方法:短期間で集中照射か長期間できっちり縮小か

 

 

放射線治療の方法には、短期間で照射する方法と、5、6週間かけて照射する方法の2つがあります。

がんの病巣をしっかりと縮小して手術する必要があるケースでは、長期間の放射線治療を選択することになります。

手術で腫瘍を取り切ることができても再発リスクが残るようなケースでは、短期間の放射線治療が選択されます。