直腸がんの治療において肛門を温存しようとする場合、出来るだけたくさんの放射線を照射してがん病巣を小さくする必要があります。
そのため、5~6週間という長期間に渡って放射線の照射を行う必要があり、1回15分程度の照射を土日祝日以外は毎日を行います。
直腸がんの病巣が大きけれれば大きいほど、それを放射線治療によって小さくすることは難しくなります。
がん病巣が広範囲に渡っている場合は、縮小はできても十分にその治療効果を得ることができないケースがあります。
一方、進行した直腸がんであっても、病巣がそれほど大きくない場合であれば、放射線治療の効果を期待できます。
十分に病巣を縮小させて、肛門温存もできる可能性が高くなります。
広範囲に広がっているがんの場合には、放射線治療ではなくまず化学療法(抗がん剤治療)を行うことで対処します。
その後で抗がん剤を併用した放射線治療を行います。
このように多様な治療法を適切なタイミングで用いるような治療を、集学的医療といいます。
これによってがん病巣を縮小し、治療効果を最大化することが期待できます。
どのようなタイプの進行がんであっても、放射線治療は有効になりうるのです。
近年、治療機器の技術が発達したことで、直腸がんの放射線治療も変化しつつあります。
新しく開発された放射線治療の方法の1つに「強度変調放射線治療」があります。
これは、放射線を目標の病巣にしっかり照射しながらも、目標ではない正常組織にはできるだけ放射線が当たらないようにするという方法で、放射線照射による副作用をできるだけ小さくして治療効果を維持することができます。
一定期間に照射できる放射線の量には上限があるため、照射範囲が広いほど1回に照射できる量は小さくなるため、その分だけ治療効果は下がります。
強度変調放射線治療では、正常組織への照射量が減るため、その分の照射量をがん病巣に集中させることで病巣への照射量を増やし、治療効果を高めることも期待されています。
そのため、局所再発率の低下や肛門温存率の向上にもつながると考えられています。
今後は、手術を行わずに放射線治療と抗がん剤の投与のみでがん病巣を死滅させるといったことも期待されます。
直腸がんの治療を考える上で、病院選びはとても重要です。
病院を選ぶ上で1つのポイントとなるのは、「直腸がんの治療に精通した外科・内科・放射線科がチームで治療を行なっているか」という点です。
複数の診療科の医療者が共同して治療に当たることで、患者それぞれにとって最適な治療法を提示することができます。
直腸がんの治療症例が多く、複数の専門医師たちがチームで治療に取り組んでいるような病院で治療を受けるのが良いでしょう。