食道がんの治療法には大きく分けて、手術、内視鏡治療、化学療法(抗がん剤投与)、放射線治療があります。
最近では、免疫療法という新しい治療も注目されていますが、免疫療法の適用があるがんはまだまだ少なく、どのがんであっても免疫療法を行うということはできません。
これらの様々な治療法を組み合わせていくことで、より予後の良い治療を行うことができるということが分かってきました。
このようにいくつかの治療法を組み合わせることを集学的治療法と言います。
進行度がステージⅡ・Ⅲの食道がんに対しては、手術を行うのが標準的とされています。
近年、手術の前に化学療法(抗がん剤投与)を行うことで、治療成績が良くなったという結果が報告されています。
手術前に化学療法を行う場合は、標準では2つの薬剤を組み合わせて行います。
この2つの薬剤が5-FU(フルオロウラシル)とシスプラチンです。
点滴で投与し、5日間程度の点滴治療を数週間の間を開けて2回行います。
この点滴治療の後に手術を行います。
最近では、より強い化学療法を手術前に行う方が予後が良いとされており、上で述べた2つの薬剤に加えてドセタキセルを3つ目の薬剤として、化学療法を行うケースが徐々に増えてきています。
この場合、化学療法と並行して放射線治療を1ヶ月半程度続けていき、手術前に腫瘍をできるだけ小さくするという方針が取られています。
化学療法に加えて放射線治療を行う治療法を化学放射線療法と言います。
これを手術前に行うことで、より良い治療成績になるのではないかと考えられていますが、これについてはまだ研究途中の段階です。
食道がんに対する胸腔鏡手術は、傷が小さく身体への負担が少ない低侵襲な治療法として、急速に広まってきています。
手術では、5~10mmの穴を5、6箇所開けて、そこから手術器具を挿入して、手術を行います。
このため、傷は小さく、痛みも軽減されるというわけです。
また、従来から行われていた開腹手術では、手術後の合併症として肺炎が起こるケースが多くありましたが、胸腔鏡手術では、呼吸機能を維持することができるため、術後の肺炎の合併は少なくなります。
さらに、中・長期的に見ても、呼吸機能が維持されるため、予後も良いと言われています。
胸腔鏡手術のデメリットとしてまず挙げられるのは、技術的に高いレベルが必要であるため、行える施設が限られていること、また、反回神経麻痺が起こりやすいことです。
反回神経は発声や食事の際の嚥下機能を担っている神経であるため、ここが手術によって障害されることで、声が枯れたり、物が飲み込みにくくなる、という症状が一過性に出やすくなる傾向があります。
胸腔鏡手術でも、従来の開胸手術でも、侵襲の程度が違うだけで実際に行なっていることは同じです。
食道と周囲のリンパ節を取り除いて、腹部を開けて、胃を管状にして持ち上げる、というかなり負担の大きい手術であることには違いありません。
そのため、胸腔鏡手術においても、術後の合併症を減らすために、手術を行う前から色々な取り組みがされています。
食道がんの患者には喫煙者が多いため、まずは術前に必ず禁煙を行い、呼吸器のリハビリを開始します。
これは手術後の肺炎を予防するために非常に重要なステップです。
また、食道がんがあることで嚥下機能が低下している患者も多く、栄養状態が低下しているケースも多くあります。
このような場合には、栄養士や言語聴覚士たちと協力して、栄養指導や嚥下指導など適宜リハビリを行い、チームで手術前から手術後、退院後もフォローをしていくことが一般的です。