食道がんの手術では、まだ人工食道がなく、何らかの自分の臓器を移植して食道を置き換えることで再建を行う必要があります。
通常のケースであれば、食道のすぐ下につながる胃を喉まで持ち上げてつなぎ直すというのが一般的です。
十二指腸潰瘍や胃潰瘍、胃がんなどで胃の手術を以前に行っている患者に関しては、小腸や大腸を利用して、再建術を行います。
食道再建術において、最も大きな合併症は縫合不全です。
これは、血流の問題などで縫合した部分の傷の治りが悪くなるという症状で、頻度は10~15%程度、比較的よく起こる合併症といえます。
食道再建術では、食道を切除して胃をつなぎ直すという手術を行います。
胃は”胃袋”とも言われるように、食後に膨らんで、食べた物を溜め込んで少しずつ腸へと送り出す機能を持っていますが、術後は管状になってより上部の肺や心臓の間に埋め込まれることになります。
ここでは、肺や心臓に阻まれて大きく膨らむことができません。
そのため、術後は1回の食事で食べられる量が減る傾向にあり、手術直後は縫合部分の経過のためにも、1回の食事量を減らして、回数を増やして食事をする必要があります。
また、最近では、手術後に痩せず、筋肉量を減らさないで維持することががんの予後にも重要であると言われています。
このため、体重や筋肉量を落とさないように生活をすることが大切です。
昨今は、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどで良い栄養ドリンクやサプリメントなどが販売されているため、それらを上手に組み合わせて栄養を摂取することで、栄養状態を維持して、低下させないことが重要です。
食道がんは、同じ消化器系のがんでも、大腸がんや胃がんと比べると発症頻度は少ない疾患であり、手術を行う際にも必要とされる技術レベルが高いとされています。
いかに合併症無く退院できるかは、医師だけでなく栄養士や言語聴覚士などのチームでの治療が行えるかどうかも重要なファクターとなります。
また、集学的治療で抗がん剤や放射線、内視鏡治療を組み合わせられる施設が、食道がんの治療には適しています。
食道外科専門医という資格を持った専門医のいる施設で、食道がんの治療症例が多く、チーム医療が充実して行われている病院を探すことが、病院選びのポイントとなります。
食道がんと診断されても落ち込まずに、まずは主治医とよく相談して、どの治療が自分に適切なのかを選んでいくことが大切です。