細胞障害性抗がん剤と免疫チェックポイント阻害剤の併用療法は、併用療法と細胞障害性抗がん剤単一療法との比較をすると、併用療法の方が上乗せで効果があることが分かっています。
効果の指標である「無増悪生存期間」や「全生存期間」は、単剤療法よりも 併用療法の方が長くなることが証明されています。
2018年末から併用療法として保険適用になる組み合わせが新たに登場しており、多くの患者さんに投与されています。
PD-L1と呼ばれるタンパク質の発現率はがんの治療において、治療方針を決定するための重要な指標の1つですが、この発現率が50%を超えるようなケースでは、ペンブロリズマブと呼ばれる薬剤を用いた免疫チェックポイント阻害剤の単剤療法と、免疫チェックポイント阻害剤と細胞障害性抗がん剤の併用療法を比較した時、その効果はどちらも同程度と言われています。
しかし併用療法にはメリットだけではなくデメリットもあります。
免疫チェックポイント阻害剤と細胞障害性抗がん剤を併用することで、二つの薬剤の有害事象(副作用)が起こり得ることになります。
併用療法における有害事象の管理は、単剤療法のときよりも一層、慎重に行わなければなりません。
一方、PD-L1の発現率が50%未満の人の場合は、細胞障害性抗がん剤の単剤療法と、併用療法を比較した時、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の方が効果が高いことが分かっています。
併用療法の方が有害事象の可能性が増えるという懸念はありますが、若年者やパフォーマンスステータスの良好な、比較的体力のある患者さんには併用療法を推奨しています。
非小細胞肺がんの中でも、扁平上皮がんの患者さんに対しては、カルボプラチンと、パクリタキセルもしくはアブラキサンに、ペンブロリズマブを加えた3剤で治療する方法が保険適用となっています。
非小細胞・非扁平上皮がんの患者さんに対しては、プラチナ製剤・ペメトレキセド・ペンブロリズマブの3剤が用いられます。
もしくは、カルボプラチン・パクリタキセル・ベバシズマブ・アテゾリズマブといった4つの薬剤を用います。
現状、非小細胞肺がんの治療は、バイオマーカーを用いたサブグループ化が行われています。
各種の遺伝子異常がある人に対しては、分子標的薬が高い有効性を示しており、そちらを用います。
PD-L1がつよく陽性の人に対しては、ペンブロリズマブの単剤療法も選択肢になります。
和歌山県立医科大学・腫瘍センターの肺がん治療では、標準療法を重要視しています。
ここで言う「標準」とは、一般的な「標準」の意味とは少し違っており、「現在、科学的・臨床的に効果があると示されている治療法の中でベストな治療法」と訳するのが良いかもしれません。
標準療法を患者さんにしっかりと理解してもらうことが、適切な治療の第一歩となります。
標準療法を大切にした上で、治験や臨床試験といった、今後の治療を変える可能性のある試験も多数行なっています。
ただし、これが行えるのは同センターの医師たちが標準療法を熟知しているからです。
「新しい」治療法ということに不安を感じる患者さんもいます。
この辺りに心情にどのように寄り添っていくかは、患者さんと医師との対話の中でしっかりと見極めなければなりません。