NOSEを用いた大腸がん外科治療:そのメリット・適応とは?

近年、腹腔鏡下手術は様々な外科手術で用いられています。前立腺がんや子宮がんなど、従来であれば大きく腹部を切開する必要があったような手術でも、小さく目立たない傷だけで完了してしまいます。今回は、「NOSE」とよばれる、新しい腹腔鏡下手術の術式について、長岡中央総合病院 消化器病センター・外科の西村 淳先生に教えていただきました。

 

腹腔鏡下手術のメリット:低侵襲、鮮明な術野で安全に手術が可能

 

 

腹腔鏡下手術は、日本でも20年以上の歴史があり、当初は傷が小さい手術・患者さんの負担が少ない手術として登場し、現在もその意義は失われていません。

 

それに加えて、腹腔鏡の器材の進歩に伴って、腹部を切開する際に拡大してよく見える点や、直接手で触れて手術を行うよりも繊細な手技が可能になる点、従来の開腹手術では見えづらかった骨盤の深部などが内視鏡によって鮮明に見える点など、メリットが大きくなっています。

 

開腹手術と腹腔鏡下手術

 

 

NOSE(Natural orifice specimen extraction)について

 

 

従来の腹腔鏡下手術では、腹部の臓器を切除した際、腹壁を切開して体外に取り出していたため、それが通るだけの傷を作ることが必要でした。

 

一方、NOSEでは「自然孔」、つまり身体に本来備わっている肛門や口、膣から切除したものを取り出します。

そのため、腹部を大きく傷つけることなく手術が可能です。

 

 

NOSEの適応:早期がんの症例には良い適応

 

 

通常の腹腔鏡下手術の場合、大腸がんであれば、ほとんど全ての症例を適応とする施設が増えていますが、NOSEはまだそうではありません。

 

NOSEの適応があるのは、腫瘍が小さく、腸の壁を突き破っていない症例、また肥満ではない患者さんです。

これは、肥満で内臓脂肪の多い人では、膣や肛門から切除したものを取り出せないためです。

大腸がんの場合、がんの深さが外側まで突き破っていなければ適応となります。

 

ただし、リンパ節転移が高度な場合は、NOSEの実施は避けた方が良いでしょう。

 

したがって、NOSEは、あまり進行していない大腸がん(ステージ0・ⅠorⅡ)、痩せている患者さんには良い適応となります。

 

 

NOSEの低侵襲性について:患者OQLの向上につながる

 

 

NOSEの場合、腹部にできる傷が、従来の開腹手術や腹腔鏡下手術よりも圧倒的に小さい点が最大のメリットです。

 

また、NOSEによる腹壁破壊の低減は、患者さんの術後の痛み減少につながり、腸ヘルニアなどの術後合併症のリスクが非常に低くなります。

 

 

 

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