NOSEのメリットとデメリット:低侵襲で術後も安心?安全性は?

近年、腹腔鏡下手術は様々な外科手術で用いられており、器具の進化によってその利便性や安全性がさらに高まっています。そのような状況の中、「NOSE(Natural orifice specimen extraction)」とよばれる、新しい腹腔鏡下手術の術式の実施が少しずつ増えています。今回は、NOSEのメリットとデメリットなどについて、長岡中央総合病院 消化器病センター・外科の西村 淳先生に教えていただきました。

 

NOSEのメリット:低侵襲、かつ術後QOLにも影響

 

 

NOSEのメリットとして、術後の痛みが少ないという点以外に、術後入院日数が短いという点が挙げられます。

 

実際、長岡中央総合病院において、NOSEを実施した患者さんと、通常の腹腔鏡下手術を行った患者さんに対して、術後の主観的なQOLについてのアンケートを行ったところ、傷の大きさ(小ささ)もさることながら、手術後の活力や心の安らぎなど、精神的な役割機能については、NOSEの方が優れているという結果が出ました。

 

術後の主観的なQOLのアンケート結果

 

 

NOSEのデメリット:難易度が高く、実施可能な施設が少ない

 

 

NOSEでは、通常の腹腔鏡下手術と比較して、手術の難易度が非常に上がります。

かなり熟練した内視鏡外科医でなければNOSEは扱えません。

 

その他、NOSEのデメリットとして、「手術手技の難易度が高いため手術時間が長い」、「腹腔内で腸を切り繋ぐため、細菌汚染や癌細胞播種の対策が重要である」、「NOSEを受けられる施設は非常に少ない」などが挙げられます。

 

また、患者さんにとって本当にメリットがあるのかどうか、厳密な判断はまだ出ておらず、通常の腹腔鏡下手術と比べた再発率も結論は出ていない状況です。

 

 

NOSEの安全性:さらなる普及と実績の積み重ねが望まれる

 

 

現在のところ、NOSEの手技は、日本国内ではあまり普及していません。

日常的に臨床でNOSEを取り入れている施設としては、長岡中央総合病院以外に、大阪医科薬科大学、大阪医学医学部附属病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、札幌医科大学附属病院などが挙げられます。

 

海外では、NOSEが多数実施されており、それらの結果を集積した大規模な研究結果が報告されています。

従来の手術手技とNOSEを比較すると、術後合併症においては差が無い、というのが世界的なコンセンサスとなっています。

 

その他、「疼痛・創感染が少なく、創のヘルニアが少ない」、「整容性に優れる」、「入院期間が短い」、「肛門機能は低下しない」という点も広く知られているところです。

 

長岡中央総合病院は、本邦で最も多くNOSEを手掛けている施設ですが、NOSEを始めた当初は合併症の頻度が多い時期がありました。

しかし、現在では、合併症の発生率は通常の手術とほとんど差が無い状態です。

実績の積み重ねが安全なNOSEの実施につながっています。

 

 

 

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