NOSEの現状とこれから:合併症は?再発時は?治療成績の具体例も

「NOSE(Natural orifice specimen extraction)」は新しい腹腔鏡下手術の術式です。腹腔内で切除したがんなどを新たなに切開した腹壁から取り出すのではなく、肛門や膣など本来備わっている孔(自然孔)から取り出すことで、さらに低侵襲な手術を目指します。今回は、NOSEの現況や進展・課題などについて、長岡中央総合病院 消化器病センター・外科の西村 淳先生に教えていただきました。

 

NOSEの合併症:重大な合併症はほとんど無い

 

 

NOSEにおいて、特別な合併症はなく、重大なものはほとんど発生していません。

 

女性の大腸がん患者で、大腸がんを切除したものを膣から取り出す場合、取り出した後は糸で縫い合わせて孔を閉じます。

膣は壁が厚くしっかりとした組織で、傷の治りも非常に良いのですが、手術後に性器出血という、少量の出血がつづくことがあります。

このような出血は自然と治り、基本的に特別な治療は必要ありません。

 

ただし、膣の一番奥の腹部に近い箇所に3~4cmの傷ができるため、術後1ヶ月は性交渉を行わないことは手術説明で伝えます。

 

 

再発時の治療について:再発後は開腹が基本

 

 

NOSE後の再発症例では、開腹手術で対応する場合が多いです。

 

NOSEはあくまでも、比較的早期で進行していないがんに対する治療の選択肢の一つであり、再発がんに対しては適応がありません。

 

 

長岡中央総合病院の治療成績:大腸がん手術の8%程度の実施率

 

 

長岡中央総合病院では、NOSEを開始してからおよそ10年が経過しました。

合計で150症例ほど実施しており、そのうち経肛門的な摘出が90症例、経腟的な摘出が60症例です。

これは、大腸がんの手術例全体の8%に当たります。

 

適応については慎重に検討してから実施しているため、今後、この割合が大幅に増えることは無いかもしれません。

 

 

患者さんへのメッセージ

 

 

大腸がんは手術が非常に重要な疾患です。

 

腹腔鏡下手術という手技が、大腸がん治療の主流を占めていますが、その中でさらに発展したものがNOSEです。

患者さんの身体への負担や、術後のQOLを重視した形の治療と言えるでしょう。

 

NOSEはあらゆる進行度の大腸がん、あらゆる体型の患者さんに適応があるわけではありません。

適応が厳密に、慎重に検討しなければならず、また、どこの施設でも実施できるわけではありません。

 

しかし、適応のある患者さんにおいては、メリットの大きい術式であるということが実感されます。

 

大腸がんを患っている人の中で、自分にNOSEの適応があるのか気になる方は、是非相談してみてください。

 

 

 

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