とくに症状がなくとも、血液検査で「AST」や「ALT」など、胆道系の酵素の値が急に上がった場合には、胆道がんやすい臓がんを疑う必要があります。
・AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
肝臓のほか、心筋や骨格筋などに広く存在する酵素。肝臓や心臓などに何らかの障害があると、血液中に漏れ出します。
・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
主に肝臓に存在する酵素。何らかの異常で肝細胞が破壊されると、血液中に漏れ出します。
また、腹部の痛みや発熱、黄疸(血液中にビリルリンという黄色の色素が増えることで皮膚や粘膜が黄色くなること)といった胆石症に似た症状が出た場合も、注意しなければいけません。
胆石症だけではなく、胆道がんも念頭においた診療が必要になります。
胆道がんは、次の3つに分けられます。
・肝臓の中の胆道がん
・肝門部の胆道がん
・肝外の胆道がん
このうち、肝臓の中の胆道がんは「肝内胆管がん」と呼ばれ、症状が出にくいことが知られています。
一方、肝門部の胆道がん、肝外の胆道がんは黄疸が出て発見される場合が多いです。
ただし、前述したように痛みや発熱といった症状も重要です。
胆道がんは、術前の治療が非常に大事です。
「黄疸があるかどうか」「胆管炎があるかどうか」によって、治療内容が変わります。
とくに肝門部胆管がんでは、大きな肝切除になるため、黄疸をとるための治療を行ってから手術をすることが一般的です。
そのうえで、「血管に浸潤があるのか」「リンパ節転移があるのか」「肝臓の転移があるのか」「遠隔転移があるのか」をチェックし、手術が可能かどうかの判断を行います。
そして切除が可能な場合は、手術を行います。
現状では化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療で根治できることは少なく、手術が唯一、根治が期待できる治療法になります。
肝内胆管がんは肝切除のみで終わる場合もありますが、肝門部胆管がんは、がんが肝臓とすい臓にまで広がっている場合は肝臓とすい臓の両方をとることになります。
また、肝外の胆管がんでは、膵頭十二指腸切除が行われることが多いです。
つまり、胆道がんとはいえ、胆管(胆道)のみの切除で手術が終わるケースはあまりありません。
年齢やそのほかの持病などを考慮し、肝臓やすい臓の切除が難しい場合は胆管のみを切除することもありますが、それだけで根治できるというデータは現状ではほとんどないのです。
そのため、肝臓を切るか、すい臓を切るか、あるいは両方を切り取る場合もあります。
胆道がんは複雑な手術になりますので、やはり手術経験が多い施設がいいでしょう。
ですから、手術数は、ひとつのポイントになります。
また、すでに述べたとおり術前の治療も大切ですので、たとえば黄疸をとるためのドレナージ(たまった胆汁を体外、または体内で排出する方法)などを確実に行える施設を選ぶことも重要です。