結腸がんの診断・治療

日本における部位別がんの罹患率、死亡率ともに上位の結腸がん。 5年生存率約70%のがんですが、早期発見・早期治療ができれば治る可能性が高くなります。 今回は結腸がんの診断・治療、リスク因子について、東京女子医科大学 下部消化管外科 山口 茂樹先生にお話を伺いました。

 

結腸がんの罹患状況

 

 

結腸がんは大腸がんとも言い換えられ、上行・横行・下行・S状結腸に発生するがんの総称です。

 

日本では年間約10万人が結腸がんと診断され、そのうち3万6千人が亡くなっています。

結腸がん、結腸に続く直腸がんともに5年生存率は約70%です。

2020年の日本における部位別がん死亡数で、大腸がんは男性で3位、女性で1位と大変高い割合を占めています。

 

早期に適切な治療を行えば治る方が多いがんであるため、検診での早期発見が重要です。

 

 

大腸がんの症状

 

 

多くの大腸がん、特に早期大腸がんは無症状で経過することが多く、進行するまで自覚症状がないのが特徴です。

 

がんの発生している部位が直腸やS状結腸で肛門に近ければ、便に血が混じる症状で気付くことがあります。

この際、痔だと思い込まず出血があれば検査をすることが大切です。

進行し腫瘍が大きくなると、下痢便秘便の詰まりを起こしたり、体表面からしこりとして触れたり、腫瘍から出血することで貧血などの症状が出現します。

 

便潜血検査では便中に血が混じっていないか調べ、高い割合で早期がんを発見することができます。

便潜血検査が陽性となった場合は、早期治療に繋げ治癒を目指すために、怖がらずに大腸検査を受けましょう。

 

 

検査~診断に至るまで

 

 

結腸がんの検査・診断には、大腸内視鏡検査が第一に推奨されます。

肛門からカメラスコープを入れ、腸内のがんのしこりをすぐに発見できます。

良性のポリープが見つかった場合は、同時に切除することも可能です。

 

内視鏡検査でがんが確認された場合には、続いてCT検査・MRI検査などの画像診断を行い、肝臓や腹膜に転移がないかを調べていきます。

これらの検査によって診断された病期や他臓器への転移の有無、患者さんの症状、年齢などに合わせて、治療方針が決定されます。

 

結腸がんの治療について

 

 

 

結腸がんの治療方針

 

 

病変が粘膜内および粘膜下層までにとどまっている早期がんであれば、内視鏡で切除し治療を完了できる場合も多くあります。

 

一方、腸壁に大きく浸潤した進行がんは、内視鏡では切除することができないため手術で外科的に切除する方針となります。

 

現在の結腸がんの手術はお腹にいくつか小さな穴をあけ、そこから細いカメラや手術器具を入れて腫瘍を切除する腹腔鏡手術という方法が主流です。

開腹手術に比べ侵襲が小さいため、術後の疼痛が少なく、回復が早いという点でメリットのある手術法です。

 

 

大腸がんのリスク因子

 

 

リスク因子として、以下のようなものがあげられます。

・遺伝性・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)・過度な飲酒・喫煙・運動不足・肥満・糖尿病

 

遺伝性因子は検査によって調べることが可能です。

血縁者に大腸がん罹患者が多数いる場合には若いうちから大腸がん検診を受けることが大切です。

 

炎症性腸疾患により腸の炎症が長年続くこともがんのリスクになるため、定期的な検査が欠かせません。

過度な飲酒や喫煙を控え適度な運動をすることなど、どの病気予防にも共通して言えることではありますが、日頃から健康に気を付けた日常生活を送ることも重要になります。

 

しかしどれだけ健康に気を付けた生活を送っていたとしても、一定の頻度で大腸がんは発生します。

不調や血便があり怪しいと思った場合には速やかに検査を受けること、何も症状がなくても定期検診を受けることを忘れないようにしましょう。

 

 

 

本サイトの利用にあたっては、当社の定める利用規約が適用されます。利用規約はこちらからご確認ください。