卵巣がんは、自覚症状、初期症状があいまいではっきりしません。
そのため、早期発見が難しいがんの代表例と言われます。
患者さんが自覚する症状で多いのは、腹部膨満感、つまりお腹が張っている感じや、便秘、お通じが出づらい――などですが、症状のみで見つけることは難しいがんの一つです。
卵巣がんの確定診断を行うには、まず、CTやMRIなどの画像検査で、お腹のなかや骨盤の状態を評価します。
また、卵巣がんは、お腹のなかに病気が広がる「腹膜播種」を起こしやすく、腹膜播種が見られる場合は、胃がんや大腸がんではないことを確認するために、胃や大腸の内視鏡検査を行うこともあります。
卵巣がんが疑われ、かつ、胃がんでも大腸がんでもないことがわかったら、組織の一部を採って確認する生検(生体検査)を行い、最終的な診断を下します。
以前は、生検は開腹手術で行っていました。
そのため患者さんの負担が大きかったのですが、最近では腹腔鏡などを使って、侵襲(体へのダメージ)の少ない手術で行うようになっています。
卵巣がんのステージ(進行度)は、次のように主に1期から4期にわかれます。
1期 がんが、卵巣または卵管内にとどまっている
2期 がんが、骨盤内に広がっている
3期 がんが、腹腔内に広がっている
4期 遠隔転移がある
1期のごく一部の患者さんは、手術のみで治療が完了し、その後、経過観察を行うのが標準治療です。
それ以外の患者さんは、基本的に、手術と抗がん剤治療(化学療法)の組み合わせが標準治療になります。
卵巣がんの手術では、子宮と両方の卵巣・卵管をとるのが基本です。その上で、リンパ節や腹膜播種の状況を確認します。
また、骨盤や大動脈のまわりのリンパ節を切除し(リンパ節郭清)、がんがないことを確認する場合もあります。
薬物療法は、1期の場合は、「カルボプラチン」と「パクリタキセル」を、パクリタキセルがアルコール不耐などの原因で使えない場合には「ドセタキセル」という薬で代用し、3週間に1回行うのが標準治療です。
2期、3期、4期では、「カルボプラチン」と「パクリタキセル」を6コース行うことがガイドラインでもっとも推奨されています。
なお、カルボプラチンとパクリタキセルを組み合わせた治療法のことを「TC療法」と言います。
抗がん剤治療は、すべて外来で行うのが基本です。
病院や患者さんによっては初回の1コースのみ入院で行うこともありますが、基本的は最初から最後まで外来で投与可能な治療です。