胃がんの明らかな危険因子は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)です。
ピロリ菌は子どもの頃に経口感染し、成人の感染は稀であると言われています。
昔は井戸水や母親から乳児への食べ物の口移し等で感染すると言われていましたが、最近では衛生環境も改善され、母親から子どもへの口移しも行わない風潮となってきているため、ピロリ菌への感染の機会は減っています。
そのため、若い人ほどピロリ菌の感染率は低くなっています。
ピロリ菌の検査方法には、血液・尿を用いた抗体検査があります。
また、ピロリ菌に反応する薬を事前に飲み、呼気バッグに採取した息の成分を調べる尿素呼気試験も行われます。
便中のピロリ菌の抗原を調べる便中抗原検査も行われています。
その他にも、内視鏡で採取した胃の組織を反応液につけて色の変化をみることでピロリ菌の有無を調べる迅速ウレアーゼ試験があります。
ピロリ菌が胃の中に住み続けると、慢性胃炎を起こします。
炎症が次第に胃全体に広がると、胃粘膜が薄く萎縮した状態になるため、状態が悪化すると胃がんのリスクが高くなります。
胃粘膜萎縮の有無はバリウム検査、内視鏡検査ですぐに確認できます。
血液検査のペプシノゲン検査を行うことでも、胃粘膜の萎縮を判定できます。
胃がんが増えてくるのは40〜50歳代です。
国が推奨している胃がん検診は通常2年に1回、50歳以上(バリウム検査は40歳以上も可)でバリウム検査か内視鏡検査を受けることとされていますが、若い年代の人でもピロリ菌検査や胃粘膜萎縮の程度を調べられるバリウム検査や内視鏡検査を受け、ピロリ菌に感染している場合はがんになる前に除菌を行っておくことが大切です。
ピロリ菌の除菌は、2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬を組み合わせて内服します。
1日2回(朝・晩)1週間内服することで、9割程度の方はピロリ菌の除菌をすることができます。
1週間内服しても除菌できなかった場合は、追加してお薬を服用します。
ピロリ菌の治療は、内視鏡検査で「ピロリ菌感染胃炎」または「慢性胃炎」と診断され、その後にピロリ菌検査で陽性と証明されれば、保険診療で除菌治療を受けることが可能です。
ピロリ菌の除菌による胃がんの予防効果は40%程度と言われていますが、効果には個人差があります。
一度除菌した後でも胃炎の痕やがんのリスクは残るため、安心せずに定期的な検診もしくは検査を受けていただくことが重要です。