ヘリコバクターピロリ感染症の除菌治療:適用や治療の流れは?

ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)に感染している場合は除菌治療が必要です。 除菌薬を用いてきちんと治療することで、胃炎などの発症や悪化を予防することが可能になります。 今回は、ピロリ菌の除菌治療について、大分大学 医学部 消化器内科学講座 教授の村上 和成先生にお話を伺いました。

 

ヘリコバクターピロリ感染症の除菌治療の適用

 

 

ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)感染症は、胃の粘膜に強い炎症を起こし、胃炎胃がんなどを引き起こします。

そのため、ピロリ菌の感染が見つかった時点で、基本的にはすべての人が除菌治療の対象です。

 

ただし、除菌薬の副作用などを考慮して総合的に判断しなければなりません。

 

たとえば、90歳の人が除菌治療を行う場合、薬の副作用が心配されるため、自覚症状胃の状態などによって対応が異なります。

胃潰瘍が生じている場合は除菌が必要ですが、症状のない胃炎のみの場合はご本人の希望を考慮した上で除菌するか判断することが重要です。

 

 

ヘリコバクターピロリ感染症の除菌治療の流れ

 

 

ピロリ菌の除菌治療には、一次除菌二次除菌三次除菌以降があります。

 

一般的に、1種類の胃酸を抑える薬2種類の抗生物質合計3剤を用いて治療します。

なぜなら、胃の中は非常に強い酸性であるため、胃酸の分泌を抑えないと抗生物質が効かないからです。

 

一次除菌では、胃酸の分泌を抑える薬としてPPI(プロトンポンプ阻害剤)またはP-CAB(商品名:ボノプラザン®︎)、抗生物質はアモキシシリン®︎クラリスロマイシン®︎を用いることがガイドラインで推奨されています。

3剤を同時に1日2回7日間服用することで、8〜9割程度の人は除菌に成功します。

一次除菌から4週間以上あけて除菌判定が必要です。

 

うまく除菌されなかった場合は、2種類の抗生物質のうち、クラリスロマイシン®︎メトロニダゾール®︎に変更して二次除菌を行います。

二次除菌治療をきちんと行えば、9割程度の人が除菌に成功します。

 

それでも除菌できなかった人は、三次除菌以降の治療が必要です。

一次除菌・二次除菌は保険適用ですが、三次除菌以降は保険適用外のため、専門のピロリ菌外来を受診して治療してください。

 

 

ヘリコバクターピロリ感染症の除菌治療による副作用

 

 

抗生物質は、ピロリ菌だけでなく腸内細菌にも作用します。

そのため、抗生物質を服用した1〜2割程度の人に、下痢腹痛が起こることがあります。

抗生物質の治療が終了すれば下痢や腹痛は治るため、自己判断で服用を中断せずに7日間は飲み続けてください。

ただし、ひどい下痢血液が混ざる場合は、主治医や薬剤師にご相談ください。

 

稀に、薬によるアレルギー反応を起こして薬疹が出る場合があります。

気になる症状があれば、主治医や薬剤師にご相談ください。

 

二次除菌で使用されるメトロニダゾール®︎はアルコールと一緒に服用すると、フラフラしたり頭がボーッとしたりする中枢神経症状が現れることがあります。

除菌治療のお薬を服用する7日間はアルコールの摂取を避けてください。

 

 

 

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