大腸がんの個別化医療はどこまで進んでいるのか

プレシジョン・メディシン
分子標的薬
一人ひとりのがんの性質を見極め、その人にとって最適な治療法を選んで行うことを「プレシジョン・メディシン」と言います。 これまで抗がん剤は「当たり外れがある」と言われていましたが、事前に「効く人」「効かない人」を見極められれば、最小限の副作用で最大限の治療効果を得ることができるようになります。 大腸がん領域において、こうした個別化医療はどこまで進んでいるのか――。大腸がんの薬物療法に詳しい、国立がん研究センター東病院の設樂紘平先生に教えていただきました。

プレシジョン・メディシンとは?

大腸がんの治療を考える際、とくに抗がん剤治療(化学療法)においては、がん細胞の性質を見極めた上で使う薬を選ぶことが非常に大切です。

 

このように、がん細胞の特徴に合わせて薬、治療法を選んでいく、個別化医療のことを「プレシジョン・メディシン(精密医療)」と言います。

 

「抗EGFR抗体」が効かない人

現在、大腸がんに対して承認されている抗がん剤は、「フルオロウラシル」「オキサリプラチン」「イリノテカン」「ベバシズマブ」「抗EGFR抗体」「レゴラフェニブ」「TAS-102」の7種類です(※2018年7月現在)。

 

現状では、そのうち、抗EGFR抗体という薬のみ、「RAS遺伝子」の変異を検査することで、事前に“全く効かない患者さん”を見極めることができます。

 

10人の患者さんにRAS検査を行うと、おおよそ5人の方にRAS遺伝子の変異が見られ、その方々は抗EGFR抗体を使っても効果が期待できません。

効果はなく副作用は出るので、メリットはありませんから、抗EGFR抗体は使わないわけです。

 

一方、RAS遺伝子に異常がない残りの5人の方には効果が発揮される可能性があるので、抗EGFR抗体を積極的に使います。

 

大腸がんの遺伝子スクリーニング「GI-SCREEN 」

RAS遺伝子以外にも、まだ研究段階ですが、がん細胞の遺伝子異常を細かく調べ、研究段階の薬とマッチングする、遺伝子検査プロジェクトも行っています。

 

こうした遺伝子スクリーニングを「SCRUM-Japan」、とくに大腸がん領域では「GI-SCREEN-Japan」と言います。

 

あくまでも研究段階ですので、「この遺伝子検査を行えば必ず合う薬が見つかる」「この遺伝子異常がある場合は、この薬が効く」ということをお約束して紹介できるものでは、現状ではありません。

 

そのため、すでに実績があって承認されている薬を差し置いてまで、「研究段階の薬であなたに合うかもしれないものがあるのでやってみましょう」と勧めることはできません。そのことはご理解ください。

※2018年5月現在GI-SCREENへの参加受付は一時中断しています。

登録再開時期については、SCRUM-Japanのホームページをご確認ください。(Doctorboook編集部:2018年7月記載)

 

ただし、将来的には、一人ひとりの患者さんに「あなたのがんはこの遺伝子異常があるので、この薬が合います」と、効果が高く、副作用が少ない治療法を紹介できるようになることをめざしています。