大腸がんに「免疫チェックポイント阻害剤」は効くのか?

プレシジョン・メディシン
免疫チェックポイント阻害剤
がんの治療のなかでも近年注目されているものの一つに、「免疫チェックポイント阻害剤」があります。 手術が不可能な悪性黒色腫や非小細胞肺がんなどに対する効果が認められており、ステージ4や再発したがんの患者さんにとって希望の光となっています。 2018年5月現在、大腸がんに対してはまだ認められていませんが、ある特徴をもった大腸がんには効果があることがわかってきたそうです。その「ある特徴」とはどういうものなのか――、国立がん研究センター東病院の設樂紘平先生にうかがいました。

大腸がんでは承認されていない

免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫細胞に対してかけているブレーキを抑えて免疫細胞を活性化し、がん細胞を攻撃してもらおうというものです。

 

すでに皮膚がんや肺がんなど複数のがんに対する効果が認められ、承認されていますが、大腸がんに対しては、現状ではまだ承認されていません。

他のがんで見られるような、「多くの方においてがんが小さくなる」といった目覚ましい結果は、最初の頃の臨床研究では出ませんでした。

 

ただ、なかにはとてもよく効く患者さんがおられて、その方のがん細胞の性質を見極めると、「マイクロサテライト不安定性」という性質をもつ場合とくに効果が高いことがわかってきました。

 

「マイクロサテライト不安定性」とは?

体の細胞は、DNAを複製し、日々、分裂を繰り返しています。

 

この細胞分裂時にDNAのコピーミスが起こると、通常は、修復するシステムが働きますが、その修復システムが弱まっているとコピーミスが見逃され、いくつかの遺伝子異常が積み重なった結果、細胞ががん化することがあります。

 

「マイクロサテライト」とはDNAの短い反復配列のことで、その反復回数にばらつきがみられることを「マイクロサテライト不安定性」と呼びます。

 

つまり、DNAのコピー時にミスを修復するシステムが働きにくくなっているということです。

 

マイクロサテライト不安定性の大腸がんの特徴

がんのなかでは、細胞分裂が頻繁に起こっています。

 

そのため、がんのなかにマイクロサテライト不安定性があると、がん細胞が分裂するときに遺伝子異常が修復されないまま、がん細胞がいろいろと変化をしながら増えていくことになります。

 

つまりは、いろいろな性質のがん細胞が増えていくということです。

 

これは、いろいろな“目印”をもったがん細胞が増えていくとも言えます。

免疫細胞は、なんらかの目印をめがけて攻撃をするので、それぞれのがん細胞が特徴的な目印を出していると、攻撃しやすくなるのです。

 

マイクロサテライト不安定性検査(MSI解析)陽性の場合

マイクロサテライト不安定性は、がんにおいてのみ起きる方もいれば、ご両親などからそういった性質を受け継ぎ、もともとDNAのミスコピーを修復する力が弱い方もおられます。

 

遺伝的に起こるマイクロサテライト不安定性と、そうではないパターンがあるのです。

遺伝性の場合、がんがいろいろなところにできやすいという特徴があります。

 

いずれにしても、大腸がん全体でみると頻度は低く、私たちのデータでは、ステージ4や転移のある大腸がんのうち、マイクロサテライト不安定性が見られたのは2%前後でした。

 

割合としては少ないものの、マイクロサテライト不安定性のある大腸がん患者さんにおいては免疫チェックポイント阻害剤がよく効きます。

 

そのため、現時点では研究段階ですが、マイクロサテライト不安定性検査(MSI解析)を行い、陽性の方には免疫チェックポイント阻害剤を用いるような研究への参加をご紹介しています。

 

大腸がんと診断された方へ

ステージ4で手術ができない状況になると短期間での治癒は難しくなりますが、うまく病気や治療とお付き合いいただくことで、治療も継続しながら、生活も今までどおり送られている方も多くおられます。

 

どのような段階であっても、主治医の先生と現状について冷静にご相談した上で、前向きに治療を進めていただければと思っています。