私たちにとって身近な疾患である「歯周病」。実はこの歯周病が、「大腸がん」と深く関わっている可能性があることをご存知でしょうか?
今回は、がん研究の第一線で活躍し、歯周病と大腸がんの関連性を明らかにする研究に取り組む來生先生にお話を伺いました。一般の方にもわかりやすく、最新の知見と口腔ケアの大切さを解説していただきます。
歯周病と大腸がんの関係──何がわかっていて、何が不明か?
現在わかっているのは以下のような点です:
- 歯周病菌(フソバクテリアやポルフィロモナス・ジンジバリスなど)が腸内環境に影響し、腫瘍の進行や炎症を助長する可能性
- 歯周病による慢性炎症が、全身の免疫に影響を与え、発がんリスクを高める可能性しかしながら、以下の点についてはまだ解明されていません。
- 歯周病が直接大腸がんを引き起こす因果関係
- 菌が腸に移行する具体的な経路(血流?消化管?リンパ?)
- 歯周病のどの治療が、どれほどがんの予防に有効なのかという定量的エビデンス現在、世界中で「オーラル–ガット・マイクロバイオーム・アクセス(口腔―腸内細菌叢の関係)」の研究が進んでおり、今後の解明が期待されています。
臨床応用の展望──口腔ケアががん予防につながる未来へ
來生先生は、「今後は、歯周病治療を通じた大腸がん予防の可能性を明らかにするため、大規模な介入研究が必要だ」と話します。
また、糖尿病手帳に口腔内の記録を残すような取り組みが行われているように、大腸がん検査との連携も視野に入れた口腔管理体制が、将来的には重要な予防戦略となるかもしれません。
全身疾患との関連──歯周病は「口だけの病気」ではない
近年、歯周病と関係の深い全身疾患として、以下のような病気が挙げられています:
- 糖尿病
- 心血管疾患
- アルツハイマー病
- 関節リウマチ
- 炎症性腸疾患
- 早期出産さらに、口腔がんや潜在的悪性疾患に特有な口腔細菌叢との関連を來生先生のチームが明らかにしており、「口の中を整えること」が全身の健康につながることが示唆され、その認識が広まりつつあります。
歯周病予防のために、私たちができること
歯周病は、自覚症状が乏しく、知らぬ間に進行するのが厄介な特徴です。來生先生は、次のような予防ポイントを提案します。
- かかりつけ歯科での定期的なチェックと専門的ケア(歯石除去・歯周ポケットの清掃)
- 正しいブラッシング方法の習得と毎食後の歯磨き習慣
- 国民皆歯科健診の活用による早期発見
- よく噛んで食べることで口腔機能や筋力の維持を図り、フレイル(加齢による虚弱)予防につなげる
口腔ケアは、がん予防への第一歩
「歯周病は放置してはいけない」。この言葉の重みは、口腔内の病気を超えて、全身の健康を守るという意味を持つようになってきました。とくに、大腸がんのような命に関わる病気と口腔環境の関連性が明らかになるにつれ、「日々の歯磨き」や「定期的な歯科通院」の価値が見直されています。
身近な習慣が、将来の大きな病気を防ぐ第一歩になる──。この事実を多くの方に知っていただきたいと願っています。