大腸がんと診断されたら

低侵襲
腹腔鏡下手術
排尿障害
ロボット手術
便が細くなった、お腹が張っている……といった症状があると、大腸がんを疑う人もいるかもしれません。ただ、実際には、こうした症状から大腸がんが見つかることは稀だそうです。 大腸がんはどういったきっかけから見つかりやすいのか、大腸がんと診断されたらどんな病院を選ぶべきか、そして、大腸がんのなかでも直腸がんだった場合の注意点とは――、京都大学医学部附属病院 消化器外科の坂井義治先生にうかがいました。

大腸がんが見つかるきっかけ

 

大腸がんが見つかるきっかけで多いのは、ほかの病気で病医院にかかり、貧血を指摘されて消化管の内視鏡検査を行ったところ、たまたま見つかったーーというケースです。

 

あるいは、直腸がんの場合は、排便時の出血や便が出にくくなったことをきっかけに受診されるケースもよくあります。

 

上部消化管のがん(食道がんや胃がん)とは異なり、「痩せてきた」「食欲がなくなった」といったことをきっかけに受診されることは少ないですね。

 

大腸がんの検査と治療の流れ
大腸がんの検査と治療法選択の流れ

 

 

S状結腸のあたりにがんができている場合、大きくなってくると、通りが悪くなるので「なんとなくお腹が張っている」「お腹が痛い」と訴えられる方もいますが、右側にできている場合、かなり大きくならなければ自覚症状は出ません。

 

 

その意味では、大腸がんのなかでも、左側にできたがんのほうが、自覚症状が出やすいと言えます。

 

 

手術は開腹から腹腔鏡、ロボット手術へ

 

大腸がんの治療法には、外科治療(手術)、内視鏡治療、放射線治療、薬物療法の4つがあります。

 

このうち、外科治療には、「開腹手術」と「腹腔鏡手術(内視鏡手術)」の大きく2つのアプローチ法があります。

 

なお、ロボット支援手術は、腹腔鏡手術に含まれます。

ロボット支援手術は、支援ロボットを使って腹腔鏡手術を行うもの。

 

ロボット手術のメリット
ロボット手術のメリット

 

 

腹腔鏡手術自体も進歩しましたし、手術支援ロボットというテクノロジーもどんどん進歩しています。

 

 

その結果、外科医が扱いやすく、患者さんにも優しい手術が提供できるように日々変わってきているので、開腹手術から腹腔鏡手術にシフトしてきたのと同じように、腹腔鏡手術のなかでも、技術革新によってロボット支援手術のほうに進んでいくことは避けられないでしょう。

 

 

直腸がんの手術はQOLも考慮して

 

直腸がんに関しては、当院(京都大学医学部附属病院)の場合、消化器内科と消化器外科、放射線治療部で話し合い、内視鏡治療で取れるものはまず内視鏡で取り、その後の病理診断の結果、ガイドライン上は追加切除(手術)が勧められるようなケースでも手術以外の手段はないかを検討し、患者さんに提案しています。

 

 

直腸がんの場合、ほかの大腸がんとは異なり、手術によってQOLが大きく変わるケースが多いからです。

 

たとえば、肛門は取らずに温存できたとしても、便を蓄える部分の肛門がなくなると、「頻便」と言って、一日に何度もトイレに行く生活になります。

 

肛門を残す手術
肛門を残す手術

 

 

少なくとも今までと同じ快適な排便というわけにはいかないでしょう。

あるいは、手術中にもしも排尿や性機能に関する神経が傷ついてしまった場合は、排尿障害、性機能障害が生じます。

 

食道がんの手術も侵襲が大きいように、やはり“入り口”と“出口”はかなり侵襲(体へのダメージ)が大きいのです。

 

 

大腸がんの病院選びはチーム力が大事

 

外科に行くにしても内科に行くにしても、病院内でチームとして意見交換がちゃんとなされているかどうかが、非常に大切です。

 

内科と外科で隔てのない診療が行われているのか、手術を受けるのであればICUがあるのか、ICUには専属の麻酔科医や外科医がいて管理しているのかどうかも、自分自身あるいは家族が治療を受けるとすれば、重視します。

 

 

がんの進行度によっては大きな手術になることもあるでしょう。

 

そうすると、手術中に心筋梗塞が起こるかもしれませんし、脳卒中が起こるかもしれませんし、何が起こるかわかりません。

また、手術後の合併症のリスクもあります。

 

 

そうしたときにすぐにサポートしてもらえるICU、あるいは循環器内科や脳外科のある、トータルで診てもらえる病院を選ぶと思います。

 

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