食道がんにおいては、飲食の際の沁みる感じやつっかえ感、食後の痛みなどの症状を呈します。
食道は、背骨の前に位置しておりますが、後ろ側(背中側)に存在しているため、背部痛などの症状が生じることも多いです。
食道がんの検査としては、上部消化管内視鏡という検査が、最も確実性が高いと考えています。
続く他の検査として、CT検査などが挙げられます。CT検査は、体全体を輪切りにして、食道病変の大きさを見る目的で用います。
そのため、早期の小さい病変は、CT検査では分からないことが多いです。
しかし、ある程度進行するとリンパ節転移しやすいというのが、食道がんの特徴です。
また、食道がんは、肝臓や肺に転移しやすいという特徴もあるため、他臓器浸潤の有無、遠隔転移や血行性転移の有無を判断するには、CT検査が最も適切で、簡単な検査であると考えています。
食道がんの手術には、開胸・開腹手術と、小さな穴もしくは小さな切開のみで行う胸腔鏡下手術の2種類があります。
胸腔鏡下手術は、傷跡が小さいだけでなく、肋間神経への影響が少なく、従来の開胸・開腹手術よりも、術後の痛みが大幅に低減されます。
胸腔鏡下手術のメリットとしては、胸壁破壊の軽減、呼吸機能低下の軽減、また、出血量の軽減が挙げられます。
患者さんにとっては、体の中で何を行っているかは分かりません。そのため、外側から見て傷が小さいことが、整容性を考える上でとても大切です。
手術で用いられる装置として、超音波凝固切開装置という装置があります。
超音波の速度で振動し、組織を凝固させて病変を切除していく機械です。
超音波凝固切開装置は、アクティブブレードを秒間47000~55500回の間で振動させ、組織に摩擦熱を起こし、たんぱく質変性を引き起こします。
この変性を利用し、凝固を行うと同時に、摩擦の力で組織を切開していきます。
しかし、この装置においては、作動する側であるアクティブブレードが、鏡視下で映っていない場合があります。あるいは、何か手前の臓器などが被り、見えない場合があります。
その点で、腹腔鏡などの手術と、リスクに差があると考えております。
気管や大動脈などにアクティブブレードが接しているのに、気づかずに使ってしまうと、あっという間に、大切な組織に穴が開いてしまいます。
アクティブブレードの代わりとして、ベッセルシーラーという、組織を双極の電気メスで焼き、カットする機能も付いている機械があります。
現在は、とても素晴らしいベッセルシーラー(血管凝固器)、ベッセルシーリングシステムというものがあります。
ベッセルシーリングシステムとは、温度を適切にコントロールしながら、7mmまでの血管等の組織を「ワンモーション」でシンプルかつスピーディーに、シール&カットできる機械です。この機械は、動かしたとしても、機械の棒が当たるだけで、大切な組織を傷つけることがありません。止血処置が必要な組織の切開には、そういう機械を用いています。
大切な部位は、電気メスなどで露出させ、そこを貫く血管を、上述のような凝固装置で処理していくのが、手術の原則となります。
食道がんのガイドラインや規約を作成している、日本食道学会のホームページを見ていただくことが、大切であると考えます。
また、最初の主治医の先生や、いつも診てもらっている先生方にも相談していただきたいです。
場合によっては、セカンドオピニオン(他の医師の意見を仰ぐこと)も使っていただき、ご自身にとって最適な治療法を選ぶことが、もっとも大切です。