がん対策の指針として国が推奨する乳がん検診とは、40歳を超えてから2年に1回マンモグラフィー※1を使った検査を受診することです。
この乳がん検診には、対策型検診と任意型検診の2つがあります。
対策型検診とは、国の指針に基づいて各自治体が公的な検診として実施しているものです。
一方の任意型検診とは、勤め先の企業が行うものもありますが、自分でお金を払って受診する人間ドックなども含まれます。
また乳がん検診には、マンモグラフィー検診以外に超音波検診が併用されています。
この併用される超音波検診は、正常な乳腺が発達し脂肪の少ない高濃度乳房※2をもつ50歳未満の女性では、マンモグラフィーに乳腺組織が白く写りしこりが発見しにくい欠点があることから、しこりが気になる方の検診として使われます。
超音波検診の場合、乳がんと思われるしこりが黒く写ります。
つまりマンモグラフィー検査で高濃度乳房であるとわかった方は、超音波検診を行ったほうが良いのです。
※1 マンモグラフィー:乳がんの代表的な検査の1つです。検査は乳房を2枚の板で挟み薄く伸ばすことによって癌を発見します。
※2 高濃度乳房:高濃度乳房とは、乳腺が多く詰まっている乳房のことです。日本人に多いといわれています。
MRI検診は、乳がんにかかる可能性があるハイリスクをもった方にお勧めする検診です。
ハイリスクとは、例えば、一生涯のうちに7〜8割と高い確率で乳がんになりやすい遺伝性乳がん※3の原因遺伝子をもっている方などです。
遺伝性乳がんは、一般人に比べて10倍以上の確率で乳がんになるといわれています。
さらにこの遺伝子の変異を受け継いでいると、普通の方と比べて10〜15歳若く乳がんを発症することがあります。
※3 遺伝性乳がん:乳がんにかかった人の5〜10%は、遺伝性乳がんの体質をもっていると考えられています。原因遺伝子はBRC1・BRC2遺伝子の変異です。この遺伝子をもっている方は卵巣がんにもなりやすいといわれています。
乳がん検診で癌の疑いがあるといわれた場合、次に精密検査を受けなくてはいけません。
このようなときに選ぶ医療機関は、乳癌学会が認定する乳腺を専門にした診療科がある施設になります。
そしてこの医療機関は、乳がん学会のホームページに記載されています。
乳腺の専門診療科がある医療機関とは、乳がんを専門に診る医師がいることと、マンモグラフィー・超音波・針生検※4・吸引式※5の組織生検などができる特別な道具立てをもち、正確な診断ができる施設になります。
※4 針生検:乳房にあるしこりなどの病変部に太り針を刺して、組織を取り出す検査です。針生検の場合、太い針を刺すことから局所麻酔が使われます。
※5 吸引式:乳房にあるしこりなどの病変部に細い針を刺して、細胞を注射器で吸引する検査です。
30年前、乳がんは年間2万人くらいの発症者数でありました。
ところが、最近のデータでは9万人まで増加しているといわれています。
さらに年齢分布によると、むかしは40歳代後半になだらかなピークがありましたが、最近は高齢者に急増しているといわれています。
いま乳がんになるリスクとして、肥満が大敵であると考えられています。
まずその理由の1つにアロマターゼという酵素があります。
通常、女性は副腎を経由しコレステロールを材料にして末梢の脂肪組織で女性ホルモンが作られる経路をもっています。
これが肥満の方の場合、脂肪組織のなかで女性ホルモンをつくるときにアロマターゼという酵素が高まります。
もう一つは、通常血糖値を上げることを防ぐために働くインシュリンがそれに見合うだけ膵臓から分泌されます。ところが、このインシュリンによって細胞増殖に影響を与え乳がんが活発になると考えられています。
つまり乳がんは、肥満が大敵になり同時に適度な運動をすることにより予防につながると考えられています。