乳房の再建術を行うのは、乳房の全摘術後が一般的です。
人工物を使う方法と、背中や腹部の自家組織(自分の皮膚など)を筋肉と一緒に移植する形で再建する方法などがあり、遊離皮弁を用いる場合は血管吻合や血行再建をする必要があります。
これらは保険適用で一般的に行われている再建術です。
最近では上記の方法に加えて、下腹部や大腿部から吸引した脂肪を用いて、乳腺や乳房(前胸部)の皮下・筋肉内に注入して乳房を形成するという方法が研究されています。
乳がんの再発様式には大きく分けて3種類あります。
1つ目は局所再発といい、これは乳房温存術を行なった場合に温存した乳腺組織や皮膚、皮下脂肪に生じるものです。
2つ目はリンパ節の領域再発です。
脇の下や首の鎖骨周囲にあるリンパ節は、乳腺の所属リンパ節であり、ここにリンパ管を経由して転移し、再発を起こします。
3つ目は遠隔の臓器に転移して再発するケースです。
局所再発・リンパ節の領域再発では、再度手術を行い、治療を再開することで治る可能性もありますが、遠隔転移のケースでは、手術で切除することが難しいため、薬物療法が主体となります。
乳がんの治療法は様々なタイプがあり、患者の進行ステージや遺伝子のタイプ、ホルモン受容体のタイプなどによって、選択できる治療が大きく変化します。
また、それぞれの治療のメリット、デメリットや患者のライフスタイルによっても、選ぶ治療は異なります。
それぞれの治療ステップにおいて、様々な希望や条件を考慮した上で、患者と医師たち医療チームのメンバーが共同して治療方針を決める、という考え方をSDM(Shared decision making)と言います。
抗がん剤治療の検討を行う際には、髪の毛が抜けてしまうのが嫌だという患者もいます。
確かに薬剤による脱毛はQOL(生活の質)を著しく下げることになります。
このような希望を取り込んだ上で、医師と患者でSDMを行い、抗がん剤治療をする上でのメリット・デメリットは何なのか、それ以外に同等の有効な治療を選択できないか、などを検討します。
このような話し合いの場を設けることで、患者が「自分の本当に優先したいことは何か」ということを考え、「髪の毛が抜けてしまう」というデメリットのある治療法であっても、納得して治療法を選ぶことができます。
SDMは、患者と医療者側の双方が、患者にとってより良い治療とは何かを考えるために必要不可欠なものです。
日本乳癌学会では、SDMを行うためのツールの1つとして、学会作成のガイドラインを使用することを推奨しています。
また、日本乳癌学会は乳腺専門医の認定を行なっています。
認定資格を有した上で症例経験の豊富な専門医であれば、丁寧なSDMを行なった上で治療をすることが可能です。
ブレスト&イメージングセンターとは、乳腺外科に加えて、抗がん剤・化学療法を行うことができる乳腺外来、MRI・CT・マンモグラフィー・超音波などの画像診断を行う総合的な医療施設です。
検診で要精密検査になった場合の検査などが1つのコンパクトな施設の中で可能であるという、利便性の高い医療機関です。
このため、比較的スムーズに精密検査をすることができ、正確な診断を迅速に得ることができます。
また、乳がん治療においては、手術と放射線治療以外の治療は全て行うことができる施設となっています。