毎年1万人以上の女性が、新たに子宮頸がんにかかっています。なかでも多いのが、20代後半から40代後半にかけてであり、比較的若い人に多いがんです。
将来的に妊娠を希望する方の場合、がんになったショックとともに、「妊娠は可能かどうか」という心配も大きいでしょう。
妊娠する力のことを「妊孕(にんよう)性」と言います。
子宮頸がんになったからといって、必ずしも妊孕性を失うわけではありません。ただし、妊娠の可能性を残すには子宮を温存することが欠かせず、子宮を温存できるかどうかは、がんの進行具合に寄ります。
子宮頸がんを根治的に治すには、がんができている部分を手術で取り除くことが基本です。そして、妊孕性(妊娠できる力)を温存するには、「子宮頸部円錐切除術」と「子宮頸部摘出術」の主に2種類の手術方法があります。
まず、子宮頸部円錐切除術とは、がんのある子宮頸部を円錐状に切り取る方法です。この方法は、子宮頸がんの診断の確認のためにも行われます。
子宮頸がんの1A1期では、子宮頸部円錐切除術を行い、脈管侵襲(リンパ管や静脈にがんが広がっていること)がなく、切除断端陰性(切除した切り口にがんが残っていないこと)、頸管内掻爬組織診陰性(子宮頸部の少し奥を専用器具で掻き取ったときにがんが見つからないこと)であれば、円錐切除術のみで経過観察を行うことが可能です。
一方、円錐切除術を行った結果、脈管侵襲陰性、切除断端陰性、頸管内掻爬組織診陰性のいずれかを満たさない場合、あるいは1A2期以降の場合は、追加の治療が必要となります。
その際、妊孕性を温存するために考えられるのが、「子宮頸部摘出術」です。
これは、子宮頸部を切除した後、子宮の上部(子宮体部)と腟をつなぎ合わせて再建するという方法です。これによって、子宮を温存することができます。
子宮頸部円錐切除術にしても子宮頸部摘出術にしても、がんが子宮頸部にとどまっていること(1期)が前提となります。
そのうち、子宮頸部円錐切除術のみで治療を終えられる可能性があるのは、前述のとおり、1A1期のみで、子宮頸部摘出術の対象となるのは、1A1期から1B1期の一部(がんが小さいもの)までです。
なお、子宮頸部摘出術は、子宮を温存し妊娠の可能性を守るための選択肢の一つですが、現状ではまだ標準治療ではありません。
将来的な妊娠を希望する場合は、そのことを主治医に伝え、「がんを根治すること」と「妊孕性を守ること」をいかに両立させるか、よく話し合って決めましょう。
子宮頸部円錐切除術も子宮頸部摘出術も、子宮を温存することはできますが、早産や流産のリスクが高まる、子宮頸部摘出術の場合は妊娠しにくくなるといったことが指摘されています。
また、子宮頸部摘出術は標準治療ではないため、実施している医療機関は限られます。経験が豊富で、妊娠や出産に向けて相談・フォロー体制が整っている医療機関を選ぶという視点も大切です。
参考
日本癌治療学会『小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン』2017年版(金原出版株式会社)