胃がん、縮小手術は可能?

胃がん、縮小手術は可能?

 

胃がんの標準手術とは

 

 

胃がんの治療は、手術や内視鏡治療でがん細胞をすべて取り除き、治癒をめざすのが基本です。手術にはいくつかの方法があり、なかでも「定型手術」と呼ばれる標準的な手術方法は、胃の3分の2以上を切除し、「D2リンパ節郭清」を行う方法です。

 

 

各リンパ節の郭清範囲

 

 

リンパ節とは、全身に張り巡らされたリンパ管のところどころにある“関所”のようなもの。リンパ液に細菌やウイルス、がん細胞などの異物がいないかをチェックし、免疫機能を発動させる働きをもっています。

がんがある程度進行すると、がん細胞はリンパ管に入り込み、近くのリンパ節にたどりついて、そこで増殖することがあります。そのため、がんの手術では、がんが転移している可能性のあるリンパ節も切除する必要があるのです。

 

「D2リンパ節郭清」とは、胃のまわりのリンパ節のうち、胃に接している「第1群リンパ節」と、胃に流れ込む血管に沿って存在する「第2群リンパ節」までを切除する方法です。

 

 

胃をどう切除するのか

 

 

胃の3分の2以上を切除するのが標準的な手術と書きましたが、その方法にもいくつかの種類があります。

定型手術の場合、「幽門側胃切除術」または「胃全摘術」が一般的です。

 

 

胃切除の様式

 

 

多いのは、胃の出口(幽門)から3分の2以上を切除する「幽門側胃切除術」ですが、がんが広がっている場合には、胃の入り口(噴門)から出口(幽門)まで胃をすべて切除する「胃全摘術」を行います。

 

 

胃がんの手術後の後遺症

 

 

3分の2の胃を切除する、あるいは胃をすべて切除すると聞くと、不安に思うでしょう。

 

胃を切除すると、食べたものを一旦貯めておく機能が失われ(または損なわれ)、食道からすぐに小腸に流れ込んでしまうため、吐き気や動機、めまい、発汗、震えといった不快な症状が生じる「ダンピング症候群」が起こりやすくなります。

また、逆流性食道炎や下痢、腹痛、消化不良なども起こりやすく、手術後の食生活には工夫が必要です。

 

 

胃がんの「縮小手術」とは

 

 

こうした手術の後遺症をやわらげ、手術後の生活の質を上げるために、定型手術よりも狭い範囲で胃またはリンパ節を切除し、なるべく胃の機能を残す手術方法もあります。これを「縮小手術」と言います。

 

 

胃の切除範囲を縮小するという意味での「縮小手術」には、胃の上部3分の1と胃の出口である幽門のまわりを残す「幽門保存胃切除術」胃の下部を温存する「噴門側胃切除術」といった方法があります。

 

 

こうした縮小手術の対象となるのは、リンパ節転移のない早期胃がんです。なお、早期胃がんとは、がんが胃の粘膜下層までにとどまっているがんのこと。

 

 

一般的に、幽門保存胃切除術は、がんが胃の中部にあり胃の出口(幽門)から4センチ以上離れていること噴門側胃切除術は、がんが胃の上部にあり、2分の1以上の胃を温存できることが条件になります。

 

 

リンパ節郭の縮小とは

 

 

また、早期胃がんの場合、リンパ節郭清の範囲も、定型手術よりも縮小することがガイドライン上でも推奨されています。

 

リンパ節転移のない早期胃がんの場合は第1群リンパ節と第2群リンパ節の一部を切除する「D1プラス郭清」が、さらに、がんの大きさが1.5センチ以下で分化型の早期胃がんの場合には、第1群リンパ節のみを切除する「D1郭清」が行われます。

 

 

定型手術か、縮小手術か

 

 

ここまで、胃がんの「標準手術(定型手術)」と、より切除範囲を小さくし、機能を温存する「縮小手術」について説明しました。

 

「再発の確率をより下げるために定型手術のほうがいいのではないか」と考える方もいれば、「なるべく胃の機能を残したい」「なるべく切除する範囲は小さくしたい」と縮小手術を希望される方もいるでしょう。そうしたご自身の希望も大切ですし、全身状態も考慮し、手術の影響を考える必要もあります。

 

たとえば、高齢の方の場合、胃を全摘することで食が細くなれば、栄養状態が悪くなると考えられれば、縮小手術がすすめられることもあります。

 

よく主治医と相談し、それでも悩むときにはセカンドオピニオンでほかの専門家の意見も聞き、納得のいく治療方法を選びましょう。

 

 

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