肝臓がん(肝細胞がん)の治療にはさまざまな種類がありますが、なかでももっとも根治性の高い治療法が、がんができた部分の肝臓を手術で取り除く「肝切除」です。
ただし、肝細胞がんの患者さんの場合、脂肪肝や肝硬変などを患い、肝機能がすでに低下していることが多いため、手術に耐えられない人が多いのも事実です。実際、手術の適応になる割合は3割ほどという現状があります。
では、どういう場合には手術(肝切除)が受けられるのでしょうか。
まず、肝臓の予備能がある程度保たれていることが条件になります。一般的に、肝臓の障害の程度はA、B、Cの3段階に評価され、そのうちのAまたはB評価であることが、手術を受けられる前提となります。
また、日本肝臓学会がまとめた「肝癌診療ガイドライン2017年版」では、「肝切除はどのような患者に行うのが適切か?」という設問(クリニカルクエスチョン)に対し、肝切除が行われるべき患者さんの条件として次の項目をあげています。
・肝臓に腫瘍が限局していること
・個数が3個以下であること
・腫瘍の大きさについては制限はない
・一次分枝までの門脈侵襲例は手術適応としてよい(がんが門脈まで広がっている場合、一次分岐までにとどまっているもの)
つまり、がんが小さくても数が4個以上に多かったり、門脈への侵襲が深かったりすると、手術以外の治療法が推奨されることとなります。
前述の条件を満たしていても、高齢の患者さんの場合、「手術に耐えられるのか」「手術を受けたほうがメリットは大きいのか」……など、悩むかもしれません。
ガイドラインでは、「個々の症例に応じて手術適応を決定する」ことと、指摘しています。つまり、「年齢が高いから」という理由だけで手術ができない、ということはありません。
ガイドラインによると、80歳以上の肝臓がんの患者さんに手術を行った症例と80歳未満の肝臓がんの患者さんに手術を行った症例で比較しても、全生存率や無再発生存率に差はみられなかった、との報告もあるそうです。
ここまで、肝臓がんで「手術ができるか、できないか」について説明しました。ただし、これは、一般的な条件です。
実際は、病院の考えや技術、経験などによって、「手術が可能か」の線引きは異なってきます。
そのため、ある病院で「手術はできません」と言われても、ほかの病院で相談すると「手術は可能」と言われることもあります。
また、手術が難しい場合にも、「ではどんな治療が行えるか」「どんな治療がすすめられるか」という選択肢も、病院によって異なる場合があります。
治療の選択肢が多い肝臓がんではとくに、複数の専門家、病院で話を聞くことが有益です。