がんが粘膜の浅い部分にとどまっている早期の食道がんの場合、内視鏡を使ってがんを切除することができますが、がんが「粘膜筋板」と呼ばれる層に達している場合は、可能なかぎり、手術が第一選択となります。
食道がんの手術では、次の3つのことを行います。
・食道の切除
がんができている部分とそのまわりの食道を切除します。がんができている場所によっては、のど(咽頭・喉頭)や胃の一部も一緒に切除することもあります。
・リンパ節郭清
がんが転移しているリンパ節を含め、がんのまわりのリンパ節を切除します。
・食道の再建
食道を切除したあと、胃(または腸)を持ち上げて残っている食道とつなぎ、新たな食べ物のとおり道をつくります。
食道がんの手術方法にはいくつかの選択肢があります。
まず、従来から標準的な手術方法として行われてきたのが、「開胸・開腹手術」です。
食道は、首(頸部)から胸部、腹部へとわたる細長い臓器です。
食道がんの手術では、がんができた場所にもよりますが、胸や腹、頸部を大きく切開し、食道やそのまわりのリンパ節などを切除して再建するという方法が従来から行われてきました。
この開胸・開腹手術では、食道にたどりつくために、体の表面だけではなく肋骨も切り開き、肺をよけながらアプローチする必要があります。そのため、大がかりな手術となり、体へのダメージも小さくありません。
最近増えてきたのが、「胸腔鏡・腹腔鏡手術」です。
体の表面に小さな孔(または小さな切開)を複数か所あけて小型カメラと手術器具を挿入し、モニターを見ながら手術を行うというものです。
傷が小さい分、患者さんの体へのダメージも小さくて済みますが、狭い空間のなかで器具を細かく操作し、確実にがんを取り除くには高度な技術を要します。
そこで、より安全に胸腔鏡・腹腔鏡手術を行うために導入されたのが、手術支援ロボットを使った「ロボット支援手術」です。
2018年4月から、食道がんに対するロボット支援手術も保険適用になりました。
さらに、首から食道に沿って内視鏡(縦隔鏡)や手術器具を挿入し、がんを取り除く「縦隔鏡下手術」も始まっています。
この方法の場合、胸腔からアプローチする方法とは異なり、肺や気道をよける必要がないため、ほかの臓器を傷害することなく、術後の合併症が少なくなるというメリットがあります。
冒頭に、食道がんの手術では、食道の切除、リンパ節郭清と食道の再建を行うと書きました。通常は、これらの手術を一度に行います。
ただ、身体的な負担が大きいため、高齢(80歳以上など)の方や臓器障害のある方などは、切除手術と再建手術を分けて行う場合もあります。これが、「二期分割手術」です。
二期分割手術では、最初の手術でがんの切除(食道の切除、リンパ節郭清)を行うとともに、胃ろうをつくり、当面は胃ろうで栄養管理を行います。
そして、リハビリテーションを行い、全身の状態が回復したら、再び手術を行い、食道の再建を行います。
このように、食道がんの手術にはさまざまな選択肢があります。
がんができている場所、がんの広がり具合い、がんの悪性度、患者さんの全身状態などによって受けられる手術方法は変わってきますが、それだけではなく、医療機関によっても得意不得意があるものです。
すべての医療機関が、前述したすべての選択肢を持っているわけではありません。
もしも主治医から勧められた治療法以外も含めて検討したい場合は、セカンドオピニオンを求めることも有用です。