免疫チェックポイント阻害剤とは、免疫のブレーキを外すことで、がん細胞に対する免疫の働きを高める薬です。
がん細胞は、日々、体内で生まれています。ただ、がん化した細胞が生まれるたびに、免疫細胞が見つけて排除することで、がんができるのを防いでいます。
ところが、がん細胞は、免疫細胞の攻撃から身を守るために、「免疫チェックポイント」と呼ばれる“ブレーキ機能”を身にまとい、免疫の働きをブロックすることがあります。
チェックポイントとは、「検問所」の意味です。
チェックポイントは、過剰な免疫反応を抑えて正常な細胞が傷つかないよう守るためにもともと備わっている仕組みですが、がん細胞は、このブレーキ機能を巧みに利用して、免疫細胞の攻撃から逃れようとするのです。
免疫チェックポイント阻害剤は、こうした「ブレーキ機能=チェックポイント」を取り除くことで、免疫の働きを活性化する薬です。
免疫チェックポイント阻害剤は、免疫療法のひとつです。
ただし、免疫療法は「効果がある」とはまだ認められいないものが多いのですが、そのなかで免疫チェックポイント阻害剤は、治療効果が認められています。
エビデンスが確立されていることが、ほかの多くの免疫療法との大きな違いです。
また、これまでの免疫療法は、
・体内の免疫細胞を採取し、培養してパワーアップさせてから体内に戻す
・免疫細胞を活性化する物質を投与する
という方法でした。
つまり、いずれにしても“アクセル”を強める治療法です。
一方、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫にかかる“ブレーキ”を取っ払うことで体が本来持っている免疫を活性化するものです。
日本で承認されている免疫チェックポイント阻害剤には、次のようなものがあります(2018年4月現在)。
・「ニボルマブ(製品名:オプジーボ)」
・「ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)」
・「イピリムマブ(製品名:ヤーボイ)」
・「アベルマブ(製品名:バベンチオ)」
・「アテゾリズマブ(製品名:テセントリク)」
効果が認められているがんは、薬によって異なります(以下、2018年4月現在の状況)。
たとえばオプジーボの場合、
・根治切除不能な悪性黒色腫
・切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
・根治切除不能または転移性の腎細胞がん
・再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫
・再発または遠隔転移を有する頭頸部がん
・がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃がん
という6種類のがんが、治療の対象となっています。
「キイトルーダ」は、根治切除不能な悪性黒色腫、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん、再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、「ヤーボイ」は根治切除不能な悪性黒色腫、「バベンチオ」は根治切除不能なメルケル細胞がん、「テセントリク」は切除不能な進行・再発の比非小細胞肺がんに対して認められています。
免疫チェックポイント阻害剤の登場で、新たな治療の選択肢ができ、これまでは治療が難しかったような進行がんが劇的に縮小したという報告も多数出ています。
ただその一方で、全員に効果が出るわけではないこと、一旦は効果が見られても一定の割合で耐性が生じて効かなくなることもわかってきています。
また、免疫チェックポイント阻害剤は、ほかの抗がん剤に比べて副作用が少ないと言われていますが、副作用がないわけではありません。
ほかの抗がん剤とは異なるタイミング、異なる内容の副作用が出ることがあり、1型糖尿病(急に発症する「劇症1型糖尿病」も)や間質性肺炎、甲状腺機能低下症、肝障害、腎機能障害など、免疫に関連する有害事象(重大な副作用)が報告されています。
今後、薬の種類も治療対象となるがんの種類も増えていくと思いますが、「どのような患者さんに・どのようなタイミングで・どのように使うのか」という使い方についてはさらなる検討が期待されています。