乳がんの概要

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分子標的薬
乳がんの概要

乳房の構造

 

乳房は、主に、乳腺を分泌する「乳腺組織」と、その周りを取り囲む「脂肪組織」血管、神経、リンパ管から成り立っています。

 

このうち乳腺組織は、15~20の「腺葉」と呼ばれる組織の集まりで、この腺葉は、乳汁をつくる多数の「小葉」と、乳汁を乳頭まで運ぶ「乳管」でできています。

 

なお、乳腺組織は40歳未満の若い人では濃度が濃く、加齢とともに脂肪組織に置き換わっていきます。

 

高濃度乳房の特徴
高濃度乳房の特徴

 

マンモグラフィで撮ると、乳腺組織はしこりと同様に白く写るため、若い人の場合、マンモグラフィでは乳がんを見つけづらいと言われるのです。

 

 

乳がんの種類

 

乳がんは主に乳管から発生します。このがんを「乳管がん」と言います。

そのほか、小葉から発生する「小葉がん」もあります。

 

また、最近では、がん細胞の特徴によって「サブタイプ」に分け、治療法を選ぶようになっています。

 

乳がんのサブタイプ
乳がんのサブタイプ

 

このサブタイプ分類では、現状、「ホルモン受容体」が陽性か陰性か(ホルモン受容体陽性のなかでも増殖能力の低い「ルミナルA」タイプと、増殖能力の低い「ルミナルB」タイプがあります)、「HER2」が陽性か陰性か――で、5つに分けられるのが一般的です。

 

 

乳がんの症状

 

乳がんの症状としてよく知られているのが、乳房にできたしこりです。ただし、しこりに触れたからといって、乳がんとは限りません。

良性のものも多くあります。乳がんのしこりは、ゴリッとしていて硬く、あまり動かないことが特徴です。

 

また、乳頭から血液が混じった分泌液が出たり、乳頭部がただれたり凹んだり、乳房に凸凹ができたりすることもあります。

 

ただし、初期には自覚症状はほとんどありません。

 

たとえば、乳がんが乳管内にとどまっている状態を「非浸潤がん」(ステージ0)と言いますが、非浸潤がんの段階で見つけようと思ったら、しこりができる前に発見しなければなりません。

 

ですから、上記のような症状に気づいたら、なるべく早く医療機関にかかりましょう。

 

 

乳がんの治療法

 

乳がんの治療法には、手術、薬物療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的薬治療)、放射線療法があります。

 

ステージ0の非浸潤がんの場合、手術でがんを取り除けば転移や再発の可能性はほとんどないため、「乳房温存手術(乳房部分切除術)」または「乳房全摘手術(乳房切除術)」を行います。

ただし、温存手術の場合は、術後に放射線療法を組み合わせます。

 

ステージⅠ、ステージⅡ、ステージⅢの一部も、手術が基本ですが、再発予防のため、あるいは温存手術を可能にするために、術前や術後に薬物療法や放射線療法を組み合わせるケースが増えています。

 

また、リンパ節への転移が認められる場合は、わきの下のリンパ節を取り除く「腋窩リンパ節郭清」を行います。

 

手術前の検査でリンパ節転移が見られない場合は、「センチネルリンパ節生検」といって、乳がん細胞が最初にたどりつくリンパ節を採ってリンパ節転移の有無を調べ、腋窩リンパ節郭清が必要かどうかを判断します。

 

センチネルリンパ節
センチネルリンパ節

 

遠隔転移を伴う乳がん(ステージⅣ)の場合、全身の治療が必要なため、薬物療法が基本になります。

 

薬物療法は、ホルモン受容体陽性の場合は「ホルモン療法」を、HER2陽性の場合は分子標的薬による「抗HER2療法」を、いずれも陰性(トリプルネガティブ)の場合は「抗がん剤治療」を――と、がん細胞の特徴(サブタイプ)や全身状態に応じて薬を選んでいきます。

 

このようにその人に合った治療法(薬)を選択できるようになり、再発や転移を伴う乳がんでも、QOLを維持しながら治療を続け、長く元気に過ごせるようになってきています。

 

また、どんなステージであっても、病気や治療による痛み、苦痛などに対しては、「緩和医療」「緩和ケア」があることも忘れないでください。

 

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