肺がんは、大まかにはステージ1からステージ4までの4段階に分かれますが、さらに細かく言えば、ⅠA期、ⅠB期、ⅡA期、ⅡB期、ⅢA期、ⅢB期、ⅢC期、ⅣA期、ⅣB期の9段階に分けられます(「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン 2017年版」より)。
肺がんの治療方法は、がんの種類や進行度(ステージ)、患者さんの体の状態によって変わります。
まず、肺がんは「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の大きく2つに分かれますが、増殖が速く転移しやすい小細胞肺がんの場合、早期に発見されることが少なく、一般的に化学療法(抗がん剤治療)が治療の基本となります。
なお、Ⅰ期で見つかった小細胞肺がんでは、手術と化学療法を組み合わせて治療を行うこともあります。
一方、非小細胞肺がんの治療は、手術でがんを取り切れる場合、手術が基本です。
では、どういう場合、手術でがんを取り切れるのかと言えば、下記の2点が大前提となります。
・片側の肺の中にしか、がんがない(手術でがんを取り切れるか)
・安全にがんを切除することが可能である(心肺機能や全身状態も含め)
そのため、肺がんの進行度で言えば、ステージ1、ステージ2、ステージ3の一部までが、一般的に手術の対象となります。
ここで、判断が難しいのがステージ3です。ステージ3になると、がんが大きかったり、肺のまわりの組織やリンパ節などにがんが広がっていたりするため、手術で取り切れるかどうかは、個々のがんの状態にもよりますし、病院や医師によっても判断が分かれるところです。
また、ステージ1、ステージ2の肺がんでも、肺の機能が低下していたり、全身状態が悪く、手術に耐えられないと判断されれば、手術以外の治療法が勧められる場合もあります。
さらに、「手術」と一言でいっても、手術の方法にもいろいろな種類があります。
これまでは、大きくメスを入れる「開胸手術」が主流でしたが、最近では「胸腔鏡手術(内視鏡手術)」も増えてきました。
ただし、「どこまで胸腔鏡手術で対応可能か」の判断は、病院や医師によって異なります。
たとえば、ステージ1の早期の肺がんのみ、胸腔鏡手術で行う病院も多くある一方、肺がん手術の9割を胸腔鏡手術で行っている病院もあります。
さらに、2018年4月より、ロボット支援手術も保険適用になりました(肺がんの場合、肺葉切除または1肺葉を超えるもの)。
また、「肺をどのくらい切り取るか」も、一様ではありません。
肺は、右側は上葉・中葉・下葉の3つに、左側は上葉・下葉の2つに分かれ、全部で5つの肺葉にわかれています。
この肺葉ごと切除する「肺葉切除術」が標準術式ですが、最近では、肺の機能をより多く残すために、小さく切り取る「区域切除」(がんのある区域のみを切除する)、「楔状(けつじょう)切除」(区域のなかでも、がんのある部分のみを切除する)といった縮小手術も行われています。
逆に、がんの広がり具合いによっては、片方の肺全体を切除する「肺全摘術」を行う場合もあります。
このように、「手術を受けられるかどうか」、手術を受けるにしても「どんな手術が適切か」は、それぞれのがんの状態、もともとの肺活量、全身状態によって変わります。
もちろん、患者さん自身の希望も大切です。
同じ「肺がん」、同じ「肺がんのステージ3」でも、“その人に合った治療”は変わります。
がんの治療では、初期治療が肝心です。
主治医の先生とよく話し、納得した上で治療を受けてください。
また、前述したように、治療方針は、がんの状態や全身状態だけではなく、病院や医師によって判断が分かれる部分もあるため、他の医師、他の病院でセカンドオピニオンを求めることも役に立ちます。