胃は消化管の一部で、食道と腸をつなぐ袋状の臓器です。
胃の入り口(食道側)を「噴門」、出口(腸側)を「幽門」と言い、さらに胃の上部を「胃底部」、胃の中心部を「胃体部」、胃の下部を「幽門部」と呼びます。
もっとも胃がんができやすいのが幽門部(とくに「幽門前庭部」という胃体部に近い幽門部)です。
また、胃の壁は、主に5層で構成されています。内側から順に「粘膜」、「粘膜下層」、「固有筋層」、「漿膜下層」、「漿膜」の5層で、胃がんの多くは胃の粘膜から発生します。
胃がんは一般的に、胃の粘膜から発生し、徐々に深く潜り込んでいきます。
胃がんでは、胃の粘膜下層までにとどまっているものを「早期がん」、固有筋層以上に深く潜っているものを「進行がん」と言います。
さらに、「肉眼的分類」によって、早期胃がんは「Ⅰ型:隆起型」「Ⅱ型:表面型(表面隆起型、表面平坦型、表面陥凹型)」「Ⅲ型:陥凹型」に、進行胃がんは「1型:限局隆起型」「2型:限局潰瘍型」「3型:浸潤潰瘍型」「4型:びまん浸潤型」にわかれます。
このうち、びまん浸潤型とは、粘膜の表面にはあまり変化がなく、がん細胞が粘膜内に根を広げるように浸潤していくタイプで、「スキルス胃がん」とも呼ばれます。
このほか、がん細胞を顕微鏡で観察したときの外見で分類する「組織型分類」では、胃がんのほとんどが「腺がん」です。
また、細胞の「分化度」によって、「分化型」「未分化型」に分けられます。
一般的に未分化型の胃がんのほうが、がん細胞の増殖が速く、進行が速い傾向があります。
ほとんどの場合、早期がんの段階では、自覚症状はありません。
がんが進行してくると、次のような症状があらわれます。
・みぞおちなどの痛み
・胃もたれ感
・満腹感
・胃のあたりの不快感
・食欲不振
・食後のつかえ
・貧血
・黒色便
・急な体重減少
・倦怠感
ただし、胃がん特有の症状はなく、いずれも胃炎や胃潰瘍などでもみられる症状です。
早期の胃がんで、がんが胃の粘膜内にとどまっている場合、「内視鏡治療」が行われます。
一方、がんが粘膜下層にまで達しているか、未分化型の胃がんで、大きさも少し大きく、リンパ節転移の可能性が高い場合、「手術」が基本です。
手術は、胃の3分の2以上と少し離れたリンパ節までを切除するのが標準的な方法ですが、リンパ節転移のない早期胃がんの場合、より小さい範囲で切除する「縮小手術」を、進行胃がんの場合は、胃のまわりの臓器も含めて切除したり、より広い範囲のリンパ節を切除したりする「拡大手術」が選択されることもあります。
また、手術の方法には、「開腹手術」と「腹腔鏡手術」「ロボット支援手術」があります。
このうち、現在の標準治療は、お腹を大きく切り開いて行う開腹手術です。ただし、腹腔鏡手術も増えており、「胃癌治療ガイドライン」でも、ステージ1の患者さんに対しては腹腔鏡手術も「日常診療の選択肢となりうる」とされています。
ステージ2やステージ3の胃がんの場合、手術の後に化学療法(抗がん剤治療)を組み合わせるのが一般的です(術後補助化学療法)。
遠隔転移を伴うステージ4の胃がんの場合は、化学療法が中心になります。
そのほか、病気や治療による痛み、苦痛などに対しては、「緩和医療」「緩和ケア」があります。どんな段階の胃がんであっても、緩和医療、緩和ケアの対象になります。痛みや苦痛、不安がある方は医療者にご相談ください。